今季の中で一番おもしろい。各章シナリオが王道から外し過ぎずに捻っておりエモい部分を突いてくるから堪らない。元エロゲー信者からするとまさに「こういうのでいいんだよ、こういうので」といった感じだ。
感想は置いておいて、予想および考察を書きたい。当初は夢オチじゃないかと考え古賀ちゃん回で着想していたのだが、かえで回からの伏線を見てから夢オチの誤り気づき、数日前3000字程の考察を書いたあたりで迷走しはじめ、よりスマートにまとめるに至った次第である。
念のために書いておくが、自分は原作既読でもないし2ch・Wiki・SNSの類は見てない。公式HPとラジオを数本聴いたぐらいなので、おまえ既読だろとかネタバレするなとか言われても知ったことではない。今までのゲームアニメやエロゲー約40作品をプレイしての直感や察しによりそう思っただけだ。
■推測
1,不可思議のカルテの歌詞には以下の意味深な内容がある
「嘘も現実もどっちも真実だったの本当よ」
「あなたと跨ぐ境界」
「あなたのいない現象界」
これらの歌詞と思春期症候群といった存在があることからも現実と非現実の世界が作中に存在していると言える。そして「あなたのいない現象界」という歌詞から人間が認識できる世界に咲太がいないという事が伺える。「あなた=咲太」はヒロイン全員が歌唱していることからも妥当な推測としていい。よってアニメ作中で見ているのは空想あるいは非現実の世界が舞台と見ていいだろう。
また、現実と非現実がどちらも真実であり境界を跨ぐことから、お互いの世界が干渉し合い何かが起きる事が予想される。これは十中八九映画となる翔子編の内容になると思っていい。
2,砂浜で人生観語る翔子を夢で見て泣いた理由
「見える世界は人の数だけ存在している」
「私は自分の人生に意味を見つけられました」
「人生って優しくなるために有るんだと思っています」
「昨日の私よりも、今日の私が、ちょっとだけ、優しい人間であればいいなと思いながら生きています」
11話Bパート/12話Aパート、回想にて妹の思春期症候群から傷心の咲太に対して翔子が語るシーンの台詞である。高校生の割に達観した人生観を持っているが、こうした考えを持つのは自身が死ぬ運命だと知っているキャラの典型的パターン。おそらく翔子は既に死亡しており、夢から覚めた直後に咲太が涙を流していることから確定だろう。
3,現実と非現実
ここから話がややこしくなってくる。2000字程書いてこの辺りで矛盾に気づき書き直す羽目になった。世界の状態をまとめる。
現実 …咲太がいない / 思春期症候群は? / 翔子は?
非現実 …咲太がいる / 思春期症候群がある / 翔子が死亡
こうなると作中における現実の必要性が薄いように思えてくる。しかし「あなたのいない現象界」を深読みすれば、「現実のヒロイン勢が咲太を知っているのにいないと認識出来る」ということになり咲太死亡説が浮上してくる。こうなれば現実で何かが起きたことに間違いなく現実での展開にも意味が出てくる。
現実 …咲太が死亡 / 思春期症候群は? / 翔子は?
非現実 …咲太がいる / 思春期症候群がある / 翔子が死亡
当初、タイトルのミスリードや日本舞台の地名、思春期症候群という設定から夢オチを構想していた。そこで翔子は「仮想世界を作る、平行世界の行き来、夢を見させる」といった能力を用いて、リトバス・ナツユメナギサ・隙間桜と嘘の都会・何処行くのあの日を始めとする主人公が仮想世界にいる展開を予想していたため現実に思春期症候群はないと推測していた。
現実 …咲太が死亡 / 思春期症候群はない / 翔子が世界構築
非現実 …咲太がいる / 思春期症候群がある / 翔子が死亡
根拠のないヒロイン能力持ちの仮想世界説により、翔子と咲太の出会いが矛盾していることで迷走したのだ。だが、能力を用いて非現実を構成するならば翔子が生存する事が可能になり以下の展開ならば問題なく事が運ぶことに気がついた。
現実 …かえで乖離性症候群 → 咲太・翔子の出会い → 翔子生存 → 咲太死亡 → 翔子が非現実を観測開始
非現実…かえで思春期症候群 → 咲太・翔子の出会い → 翔子死亡 → 咲太存命 → 翔子の異時間同位体出現(現実の翔子が非現実に及ぼした思春期症候群)
4,反論と蛇足さ
ここまでで大体の流れは予想できたものの、やはり根拠が乏しい用に思う。いきなり翔子が能力持ちと言われてもハァ?としかならないが、古来エロゲではそういう設定がまかり通っていたので自分もその考えがアリとしか思えないのだ。能力設定を持ち出すことで筋を通せてしまうのも事実だ。もちろん、自分が夢オチベースとヒロイン能力持ちという設定から導きだしているだけなので、他に筋の通せる推測が無数にありえるのは言うまでもない。
アニメ13話を映画での問題解決の仕込みと考えると豊浜・双葉・古賀の3人は非現実を裏付けるためのケース紹介だけに思えてしまう。そして、すべてが咲太と翔子の物語とするならば麻衣ですらたいして重要な存在ではなく、SAOのキリトとアスナほど強い繋がりも描けていないようにも思える。描写する意味がないとは言わないが、まさかサクラダリセットのように終盤大活躍するのだろうか。
5,いっちょんわからん咲太の思春期症候群
もっともわからないのが主人公の傷が発生した思春期症候群である。明らかに自傷行為とは思えない大きさの3本傷だが、寝巻きのスウェットが破けていないのだから非現実で間違いない。かえでの問題で傷心の末に発生したとされているがこれはミスリードだろう。これは咲太が現実で死亡した事に対し翔子がなんらかのアクションをしたことで、非現実の咲太に思春期症候群として影響が及んでいるだけなのではないだろうか。つまり現実と非現実がかなり表裏として近くに存在しED歌詞にあるよう境界を跨ぐ可能性があると推測できる。
しかしこうなるとわからなくなるのが時系列である。アニメからわかる非現実の時系列をベースとして現実にも当て嵌めた上でもう一度考察し直してみる。
現実の流れ 非現実の流れ
かえで乖離性症候群 かえでの思春期症候群
咲太死亡 咲太の思春期症候群
咲太・翔子の出会い 咲太・翔子の出会い
翔子生存(能力覚醒?) 翔子死亡
翔子が非現実を構築・観測開始 翔子の異時間同位体
(現実翔子の思春期症候群)
ここで致命的な矛盾点が出現してしまう。咲太の思春期症候群の裏で咲太死亡が発生していると考えると、非現実では出会っている咲太と翔子ではあるが、現実では出会っていないことになる。現実の翔子が咲太と接点がないということは非現実の咲太に干渉するような必要性がなくなってしまう。というものだ。
正直、この微妙な時間のズレとふたりの繋がりを埋めるイベント予想を立てることができずに詰まった挙げ句、不可思議のカルテ(全員ver)を聴いていて矛盾なく繋がる展開に到達したのが数時間前だ。
6,不可思議のカルテの致命的ネタバレ
咲太死亡と咲太の思春期症候群を同時に発生させる鍵がED歌詞にあった。
「カルテ」
「鼓動 世界象 いつも噛み合わないの痛くて 毎夜ねがいごと
なんにも疑わないで 混ざり融け合いたい」
「思春期 疵口 胸のうち」
つまり、現実で咲太死亡によりドナー提供し翔子が生存する。現実での咲太と翔子の出会いはドナー提供による間接的なもの。鼓動が翔子と噛み合わない事から心臓のドナー。思春期の疵口は胸のうちに真実があるよ、と。まんまAngel Beats!でいいのかこれでという不満は多分にあるのだが…正直これでいいだろう。
ED歌詞には他にも多くの意味深なワードが点在する、愛されたいや自意識、不愉快を繰り返すなどである。そちらに触れていけば色々と推測を広げられそうではあるが、ネタバレ考察というものは往々にして自己解釈に都合のいい要素しか拾わないものなので自分も放置させてもらう(手に負えなくなるからだ)。現実でヒロイン勢が咲太を知らないのに「あなたのいない現象界」となるのはガバガバのガバなので突っ込まないで頂きたい。翔子視点の歌詞と見れば通ると思うのでまあ。
■まとめ
現実において翔子はドナー提供を受け助かるものの、花楓は解離性障害が治らないままだし、古賀ちゃんは大人に慣れずにキョロ充のまま、豊浜はコンプレックスを抱えたまま、双葉は咲太と出会わず片思いぼっちのまま。麻衣は芸能界に復帰しない。まったく各登場人物が救われないBAD ENDな世界だ。
対して非現実は救いのある世界だ。これは翔子が構築した世界なので当然だ。「人生って優しくなるために有るんだと思っています」と語るように、こんな人生観を持った少女が作る世界なのだから不幸なシナリオなんてあっちゃいけない。
ここまで来たらふたつの世界をどちらも救おうってなるのかもしれないが、それは趣がない。個人的に救われない世界と救われた世界が存在するという展開は非常に好みだ。咲太が片方の世界では死亡している事実を知るというのが映画およびこの作品の着地点になるのではないかと自分は予想する。それが無難で無駄に話を壮大にさせずに余韻を残せる流れのように思えるのだ。